カスハラと社会情勢の変化

カスハラについて体制整備や被害者への配慮等の取組を行うことが望ましいとされた

平成30年6月に労働施策総合推進法等が改正され、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となったことは、記憶に新しいところです。

これに加え、令和2年1月には、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)が策定され、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為(以下「カスタマーハラスメント」)に関して、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましい旨、また、被害を防止するための取組を行うことが有効である旨が定められました。

具体的な社会の動き

現在、カスハラに関する具体的な社会の動きとして以下のようなものがあります。

●労災認定基準改正

厚生労働省は,令和5年9月1日付の労災認定基準の改正において、心理的負荷評価表に、具体的出来事「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(カスハラ)を追加しました。

●旅館業法改正

業界によっては個別の法改正もなされています。令和5年12月13日に施工された改正旅館業においては、宿泊を拒否できる場合として、その実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求、具体的には、宿泊料の減額その他のその内容の実現が容易でない事項の要求や、粗野又は乱暴な言動その他の従業者の心身に負担を与える言動を、繰り返したとき(旅館業法第5条第1項3号、旅館業法施行規則第5条の6)が追加されています。

●条例改正

令和6年2月20日、東京都がカスハラの防止条例を制定する方針を固めたとの報道がありました。カスハラ防止を柱とする条例は全国初とのことです。同条例ではカスハラの禁止を明記し、従業員をカスハラから守る企業側の責務を規定することも検討中で,禁止行為の具体事例もガイドラインで示す見通しとのことです。

●法改正

令和6年5月12日、厚生労働省が、労働施策総合推進法を改正し、従業員を守る対策を企業に義務づける検討に入ったとの報道がありました。同月13日には、顧客による迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に関する自民党のプロジェクトチーム(PT)が、従業員保護策を企業に義務付ける法整備に言及した提言案をまとめたことについての報道もありました。

このように現在、企業は、カスハラについて取引遮断も含めた毅然とした対応をとることや、カスハラから従業員を守ることが求められています。