2024/12/20 公開
カスハラで氏名公表も!?桑名市カスハラ条例案が話題に
先日、東京都で全国初となるカスハラ防止条例が制定されたことが話題になりましたが、この12月にも、三重県桑名市でもカスハラ防止のための条例案が議会に提出されたとの報道がありました(※1)。
桑名市のカスハラ防止条例案で話題を集めているのが、カスハラ行為者について氏名公表の制裁を盛り込んでいる点です(※2)。
具体的には、桑名市HPによれば、
- カスハラ対策について調査審議するため、有識者・学識経験者で構成される専門機関を設置する。
- 事業者等は、桑名市長に対し、顧客の言動がカスハラに該当するか否かについて判断を求めることができ、市長はその判断にあたっては専門機関に意見を求める。
- カスハラに該当すると判断された事案について、その概要を公表する。
- カスハラをした行為者に対し警告を発し、それでも状況が改善しない場合は、氏名の公表を行う。
とのことで、特に氏名公表の点には賛否の声があるようです。
私自身も、氏名を公表するとなると、その前提として市長(と諮問先の専門機関)は慎重かつ十分な調査を尽くす必要があると思われるところ、日々の業務の中で発生しうる多種多様なカスハラの解決のためには、時間をかけることなく迅速に対処することが重要であり、氏名公表が事案解決に資する場面はそう多くないのではないかと考えています。
氏名公表の制裁は、むしろ抑止効果を狙ったものかもしれませんが、穏当かつ妥当な苦情・クレームをも委縮させるリスクがあるように思われ、いずれにせよ条例制定後も継続した検討・議論が必要でしょう。
とはいえ、安心・安全な就業環境の実現のため、行政がカスハラ防止条例を整備する流れは歓迎すべきもので、今後もこのような動きが全国に広がっていくことを期待しています。
2024年12月20日
弁護士 小谷 知也