2025/03/26 公開

ILO条約とカスタマーハラスメント

2019年、ILO国際労働機関で、「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」が採択されました(日本は未批准)。ILO条約はカスタマーハラスメントへの対策もふくんでおり、また、公務員、福祉、教育などの職種におけるカスタマーハラスメントの問題もふくんでいます。ILO条約には次のとおり書かれており、カスタマーハラスメントの問題を考えるときも念頭におく必要があります。

 「ハラスメントは人権侵害」
 「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と相容れない」
 「ハラスメントは公共および民間のサービスの質に影響する」
「仕事の世界に関わる全ての当事者が、暴力とハラスメントを自制し、防止し、これに対処しなければならない」
 「ハラスメントのない仕事の世界に対するあらゆる人の権利を尊重、促進、実現する」

加盟国は、ハラスメントにさらされやすい職種を特定し、効果的に保護する必要があります。ハラスメントにさらされやすい職種として、飲食、宿泊などのほか、公務員、福祉、教育などもあります。加盟国の法令では、ハラスメント及びこれによる心理的リスクを考慮し、これらのリスクを適切に評価し、これらを防止、管理するための措置を、使用者に求めるべきとされています。

近時、法律の専門誌でも、ILO条約にふれてハラスメント防止のための総合的な立法が望ましいという議論がなされています(『ジュリスト』2025年1月号)。カスタマーハラスメントの問題はどこかに特効薬があるようなものではなく、国、使用者、労働者、市民が「ハラスメントは人権侵害」という意識のもと、協力しあって対処していくものです。ILO条約はそのヒントになると思います。

2025年3月26日
弁護士 米倉 正実

一覧に戻る