2025/06/09 公開

カスハラ対応が企業に義務付けられます!

令和7年6月4日、いわゆる労働施策総合推進法(正式名は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)の改正案が成立しました。

厚生労働省のHP(※1)には、当初の法律案と、衆議院で可決された修正案が掲載されており、これらを合わせて読むと、新法の内容を知ることができます。
新法では様々な改正がなされていますが、33条や34条に次のような定め((略)、太字及び下線は筆者による)が置かれました。

カスハラを、「その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境が害されること」と定義づけるとともに、企業がカスハラについて、必要な対応を行うことを義務付けています。

  • 事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(略)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(略)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
  • 事業主は、労働者が(略)相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
  • 事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずる(略)措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
  • 事業主は、顧客等言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる(略)措置に協力するように努めなければならない。
  • 事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう努めなければならない。

これまでも厚生労働省の指針などを通して、企業はカスハラに対応すべきとされていましたが、法令上の義務として明確になったことで、企業としては、1日でも早く、カスハラに関する体制を整えることが求められているといえるでしょう。

企業が実際に、どのような対応をすべきかについては、新法で「厚生労働大臣は、(略)事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(略)を定めるものとする」とされていますので、今後、厚生労働省の指針を確認した上での体制作りが必要となってきます。

弊所としても、新法が示している「研修の実施」などを通して、皆様のカスハラ対応にお力添えできればと考えております。

2025年6月9日
弁護士 鶴田昌平

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