2025/09/12 公開
三重県桑名市のカスハラ防止条例に初の認定事例
2024年12月20 日公開の弊所ブログにおいて、カスハラ行為者に対する氏名公表の制裁を盛り込んだ三重県桑名市の「桑名市カスタマーハラスメント防止条例」の制定について取り上げました。
本年6月30日、桑名市は初めて同条例に基づくカスハラを認定し、事案の概要を公表するとともに(条例9条1項)、カスハラ行為者に対して警告を発しました(条例9条2項)。
公表内容によると、行為者(顧客)の荷物を破損させた配送業者に対し、破損した荷物の再購入に同行することや、不当な高額賠償(再購入にかかる交通費、荷物の破損によりキャンセルとなった予定に係る交通費の請求等)、土下座の要求等をしたという事案です。
桑名市は、行為者の要求内容の妥当性がなく、その手段・態様が社会通念上不相当であり、就業者の就業環境を害するおそれがあることから、有識者委員会の審議を経てカスハラを認定し、警告を発しました。
今後、警告を受けた行為者において状況の改善がみられなければ、さらに進んで同9条3項に基づき、氏名公表の措置をとることができるとされています。
なお、警告書の発出と氏名公表にあたっては、市は、カスハラ認定の請求を行った就業者及び当該就業者を就業させている事業者等(被害者側)の承諾を得ることとされています(桑名市カスタマーハラスメント防止条例施行規則8条1項後段・同12条4項)。
これは、「桑名市カスタマーハラスメント防止条例逐条解説」(桑名市役所、2025年7月1日、22頁)によりますと、氏名の公表を行った場合、これによって行為者が逆恨み等をする可能性があることから、行為者の氏名を公表(それに先立つ警告書の発行)するにあたり、当該就業者等(被害者側)の承諾を得ることにしたとのことです。
現時点では上記事案における行為者の改善状況は明らかではありませんが、当該行為者への警告が実効性を有することを期待したいです。
- 事案概要(桑名市HP)
https://www.city.kuwana.lg.jp/shoko/shigoto/cusharaboshi/gaiyokohyo.html - 桑名市カスタマーハラスメント防止条例
https://www1.g-reiki.net/kuwana/reiki_honbun/r069RG00001827.html - 桑名市カスタマーハラスメント防止条例施行規則
https://www1.g-reiki.net/kuwana/reiki_honbun/r069RG00001839.html - 桑名市カスタマーハラスメント防止条例逐条解説
https://www.city.kuwana.lg.jp/documents/12184/chikujokaisetsu.pdf
2025年9月12日
弁護士 篠﨑 竜也