2026/09/09 公開
ハラスメント申告がカスハラの手段になるとき-申告への適切な調査と従業員保護をどう両立するか
はじめに
「従業員からハラスメントを受けた」「担当者の対応によって精神的苦痛を受けた」といった申告が企業の相談窓口などに寄せられたが、調査してみたところハラスメントと評価するほどの言動は認められず、むしろ顧客の行動の方がカスタマーハラスメントに該当しうるケースを何件か、立て続けに耳にしました。
社会に「ハラスメント」という言葉や概念が広く浸透した一方で、ハラスメント申告が、過大な要求を通すための手段として用いられる場面も生じているのではないかと感じます。
そのため、企業には、申告内容を適切に調査する一方で、要求内容や要求方法がカスタマーハラスメントに該当しないかを検討し、対応する従業員を守ることが求められています。
1.申告内容を適切に調査する
申告があった場合、企業は、申告者と従業員のどちらかを最初から「被害者」「加害者」と決めつけることなく、関係者から事情を聴き、記録を確認するなどして、事実関係を整理する必要があります。
従業員の対応に問題があった場合には、企業として必要な謝罪や改善を行います。従業員の対応に問題が認められない場合には、確認できた事実と企業としての判断を整理し、申告者に説明します。
2.申告への調査と並行して、カスハラにも対応する
申告への対応と並行して、申告者の要求内容や要求方法が社会通念上許容される範囲を超えていないかを検討し、必要に応じてカスハラとしての対応を取ることが重要です。
申告内容の調査中であっても、暴言、脅迫、執拗な要求などを従業員が受け続けなければならないわけではありません。
厚生労働省は、職場において行われる次の三つの要素をすべて満たすものを、カスタマーハラスメントとしています。
- 顧客等の言動であること
- 労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること
- その言動によって労働者の就業環境が害されること
(参考:厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」)
したがって、苦情や申告に一定の理由があったとしても、その要求内容や要求方法が社会通念上許容される範囲を超えれば、カスタマーハラスメントに当たる可能性があります。
例えば、次のような事情がある場合には、カスハラとしての対応を検討する必要があります。
- 企業が調査結果や見解を説明しても、合理的な理由なく同じ確認や回答を何度も要求する
- 従業員の解雇、異動又は懲戒処分を執拗に求める
- 社内で行った処分の内容や、従業員の個人情報の開示を要求する
- 法的根拠の明らかでない高額な慰謝料を要求する
- 長時間の電話や面談を繰り返し求める
- 対応する従業員に暴言や人格攻撃を行う
- 「ハラスメント企業としてSNS上で公表する」などと告げて要求を通そうとする
このような言動がある場合には、状況に応じて、次のような対応が考えられます。
- 連絡窓口を管理職や法務部門などに一本化する
- 今後の連絡を書面に限定する
- 電話や面談の時間・回数を制限する
- 既に回答した事項については再回答しないことを通知する
- 暴言や脅迫的な言動が続く場合には、電話や面談を打ち切る
- 悪質な場合には、警察への相談や法的措置を検討する
「ハラスメント」という言葉には強い力があります。そのため、企業側が「被害を訴えている人に反論してはいけない」「要求を断れば二次加害だと言われるのではないか」と考え、必要以上の対応を続けてしまうことがあります。
しかし、申告を真摯に受け止めて必要な調査を行うことと、根拠のない要求や過大な要求を断ることは矛盾しません。
特に、執拗な連絡を受けている場合や暴力的言動がある場合などは速やかに弁護士に相談し、企業としての回答内容と対応の限界を定めることが重要です。
3.当事務所がお手伝いできること
当事務所では、カスタマーハラスメントや不当要求への対応経験を踏まえ、主に次のような支援を行っています。
- 従業員への聴取や関係資料の確認による事実関係の整理
- 従業員の対応に問題があったかどうかの法的評価
- 申告者の要求内容及び要求方法が相当かどうかの検討
- 企業として認めるべき点と、応じる必要のない要求の切り分け
- 申告者に対する回答書、警告書その他の文書の作成
- 連絡窓口の一本化や、電話・面談・書面対応のルール作り
- 企業の代理人としての申告者との交渉
- カスハラ対応方針、社内マニュアルの作成及び従業員研修
当事務所は、申告者の訴えを単に拒絶するのではなく、申告内容の当否と、要求内容・要求方法の相当性を分けて検討し、企業が適切な対応を取りながら従業員を守ることを支援します。
まずは法律相談だけお受けすることも可能ですので、お気軽にご相談頂ければと思います。
2026年9月9日
弁護士 細田 祥子
